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日本の伝統工芸の課題と魅力

11月は経済産業省によって「伝統的工芸品月間(※)」と定められています。


そこで今回は、日本の伝統工芸が抱える課題に着目します。また、日本が守っていくべき伝統工芸品の魅力も同時にお伝えできればと思います。


筆者は学生時代、2023年12月8日(金)からはじまるチャリティーオークションを主催される「日本工芸堂(運営会社:日本工芸株式会社)」の元で、伝統工芸のファンを増やしたいという思いを抱きながらマーケティングを学ばせていただきました。そのとき考えたことや日々感じることも交えながら、お伝えさせていただきます。


※伝統的工芸品に対する国民の理解とその一層の普及を目指して、昭和59年から毎年11月を「伝統的工芸品月間」と定め、全国各地において普及および啓発に資する事業を実施しています。(引用:経済産業省HPより)



そもそも伝統工芸品とは

テーブルの上に置かれた切子
(画像提供:日本工芸株式会社)

そもそも伝統工芸品とは何なのか。伝統工芸品は、伝統的な技術を用いて主に手作業で製造される日用品のことをいいます。具体的には、次のような特徴を持っています。


  1. 主に日常生活で使われる

  2. 製造工程の多くが職人の手作りである

  3. 伝統的な技術や技法によって製造される

  4. 主に伝統的に使用されてきた原材料を使用して製造される

  5. 一定の地域で製造され、受け継がれてきた


単に伝統的な技術が使われているだけではいけないのですね。

「日常生活で使われる」とあるように、伝統工芸品は芸術品ではなく、きちんと人々の日常生活で身近なものとして使われてきたのです。



伝統工芸が抱える課題

職人が竹を加工する様子
(画像提供:日本工芸株式会社)

江戸時代から長きに渡って受け継がれてきた伝統工芸。ですが伝統工芸の「今」にはいくつもの課題が存在しています。その中から今回は3つの課題を取り上げてご紹介します。みなさまにとって「こんな現状があるんだ」と何か気づきが得られるような機会になれば嬉しく思います。



課題1|生活スタイルの変化による需要の低下

「伝統工芸」と聞くと、「昔」というイメージを持つ人が多いと思います。それゆえに、今の生活には合わない印象を持たれ、「売れない・儲からない」という状況に悩まされる職人さんやメーカーが増えています。


長い間受け継がれてきた技術を使って作る伝統工芸品。時代とともに人々の生活スタイルやニーズが変化し、分野によっては現在の生活で使う習慣がないものもあります。

また、現代は目まぐるしく技術が進歩しており、一昔前には考えられなかった便利な電化製品などで溢れていますよね。生活に取り入れやすい工芸品であったとしても、大量生産・大量消費の時代となってからは購入されにくくなっているのが現状です。


筆者は個人的に、伝統工芸品には「便利さ」を上回る魅力があり生活に豊かさをもたらしてくれるものだと考えています。こちらについても、後半に述べさせていただきます。



課題2|職人の後継者不足

耳にしたことのある方も多いと思いますが、職人さんの高齢化が進んでいます。80代の職人さんがなんとか受け継いでいて、その後を継げる人がいない…というメーカーも少なくありません。

ある一つのメーカーが後継者不足で伝統工芸事業が存続できなくなった時、実はそのメーカーだけでなく、分野全体に影響が及ぶこともあります。分業体制をとって、複数のメーカーを通してやっと一つの工芸品が作られる工芸分野も多いためです。一度なくなってしまった伝統工芸は復活が難しいと言われています。江戸時代からのよき文化をつないでいくために、職人の後継者不足という課題と向き合っていかなければいけないと感じます。


後継者不足の原因を考えた時、若者の関心がなくなっていること以外にもさまざまな問題が絡み合っています。親族だけで事業をしているところも多いですが、外から人を雇いたいにも関わらず、金銭面から諦めるところもあります。経済的余力がないのは、やはり工芸品が売れづらくなってきている、というところからはじまっています。


しかし、近年では「働く」ということを考えた時、興味のあることややりがいを大切に選択する若い世代が増えてきています。伝統工芸に関心を持つ若い世代も決して少なくなく、私も学生時代、同じように「日本の伝統工芸品の魅力を発信していきたい」という想いを持つ同世代の人にたくさん出会うことができました。

また、繊細なつくりの日本の伝統工芸品は海外からも注目されていて、SNSを見ていると海外の方が日本で職人になることを目指している様子が流れてくることがあります。


海外の方や若年層従事者の新しい感性と、ベテラン職人さんの技術が掛け合わされれば、伝統工芸との接点が少ない若者にも興味を持ってもらえる何かが生まれるのではないかと、筆者個人は期待しています。



課題3|原材料や用具の確保

5年10年継続できるか分からない・出来ないかもしれないというメーカーがあることには、後継者不足だけでなく、製造過程で必要になる原材料や用具の確保が困難になっている点も原因のひとつです。伝統工芸に使われる道具や原材料は、市場に出回っているものではありません。


経済産業省大臣から認められた工芸品は「伝統的工芸品」と呼ばれますが、その認定条件の中にも、


  • 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるもの

  • 一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているもの

(引用:経済産業省HP)


という項目が含まれています。

伝統工芸は一定の地域でつくられてきたものなので、原材料もその周辺地域の特徴を生かしたものである場合が多いです。伝統的に使用されてきた原材料や道具を変える訳にはいきません。

しかし、その大事な原材料が枯渇しはじめているのです。主な原因は、原材料の供給量が減っていること。


生活スタイルの変化などから伝統工芸品の需要が低下する

→伝統工芸品の売上が減る

→伝統工芸品の生産量も減る

→原材料や用具の需要が減り、供給も減る

という悪循環が生まれているのです。


今回紹介した3つの課題は、決して独立したものではなく複雑に絡み合っているのだと気づきました。だからこそ、一つ一つの課題に少しでも光があたれば、この循環が回復していくのではないかと筆者は思います。そう簡単にうまくいくことではないと思いますが、モバオクとして日本の工芸品の魅力を伝えることで、少しでも関心を持ってくださる方を増やし、伝統工芸産業の未来に貢献できたらと思っております。



日本が守っていくべき伝統工芸の魅力

並んでいる器
(画像提供:日本工芸株式会社)

ここまで日本工芸の課題について紹介させていただきました。ここからは、伝統工芸だからこそ味わえる魅力があるのだということを伝えさせてください。伝統工芸品好きな筆者の視点で数ある魅力から「経年変化」に焦点を当てて語らせていただきます。


伝統工芸品は使い続けると味が出てきます。天然素材が使われる工芸品が多いので、長い間使用すると色や手触り、性能などの変化を感じられるようになります。


筆者の伝統工芸品への関心が強くなったのは、「経年美化」という言葉を聞いたことがきっかけでした。一般的には「経年変化」と呼びますが、『日本製』(三浦春馬 著、2020、ワニブックス)という本では、漆器の経年変化を「経年美化」という言葉で語られていたのです。変化することは決して衰えるということではなく、月日を重ねて独自の美しさを持つということなのだと。筆者はそう解釈し、この言葉がすっと入ってきました。日々、伝統工芸品を使うたびにこの言葉を思い出し、温かい気持ちになります。


使えば使うほど美しくなっていく。

日々使い続けた証が目に見える。

使うたびにいろんな思い出が思い出される。


これは、日本の伝統工芸品だからこそ味わえる魅力なのではないかと筆者は日々思います。




今回は1つだけ魅力を紹介しましたが、伝統工芸にはまだまだたくさんのいいところがあります。12/8(金)からモバオクでオークションをしてくださる日本工芸堂のこちらの記事では、伝統工芸のよさとして以下の6つを詳しく解説されています。あわせてチェックしてみてください!


  1. 職人の手作り

  2. 使いやすさとデザイン性を兼ねそなえる

  3. 経年変化そのものを楽しむ

  4. 修理して使い続けられる

  5. 日本の歴史と地域の特性を知る機会になる

  6. 自然との調和




クイズあり!オークションあり!のモバオク日本工芸プロジェクト

モバオク日本工芸プロジェクト

モバオクでは、11月の「伝統的工芸品月間」に合わせて、日本の工芸の魅力を発信しています。

11月13日(月)からは、X(旧Twitter)で「知ってトクする!?工芸クイズ」を行っています。ラスト3問を全問正解した方の中から抽選で3名様にAmazonギフト券プレゼントいたします。ぜひご参加ください!

また、12月8日(金)からは、日本工芸堂様主催のチャリティーオークションを開催。工芸職人がつくった斬新なアイテムを出品いたします。都内神谷町トラストタワー内「CoCo JAPAN」にて、オークション出品アイテムの展示も行いますので、ぜひ足を運んでください。


クイズやオークションの詳細は、以下の「モバオク日本工芸プロジェクト特設サイト」へ。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。

あと2回、記事を通して日本の伝統工芸について発信していきます。

次回の記事公開も楽しみにしていただけたら嬉しいです!

 

参考:

〈日本工芸堂HPより〉

〈その他〉

総務省HP

『日本製』(三浦春馬 著、2020、ワニブックス)



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